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⭐新しい抗うつ薬「ズラノロン(ザズベイ)」と「産後うつ」への適用について

[2026.07.15]

今回は、新しい抗うつ薬であるズラノロン(Zuranolone:国内製品名ザズベイカプセル30mg)と産後うつへの適用について分かりやすくまとめました。

2017年、私が米国に留学していた頃、産後うつ病に対する新しい治療法として、神経活性ステロイドを用いた臨床試験の論文を読みました。当時研究されていたのは、後に点滴薬として実用化されたブレキサノロンでしたが、従来の抗うつ薬とは異なる仕組みによって、産後うつ病の症状を比較的速やかに改善する可能性が示されていました。

その後、同じ系統の作用を持ち、内服できる薬として開発されたのがズラノロンです。

産後は、出産に伴う急激なホルモンバランスの変化に加え、睡眠不足、育児の負担、不安や孤立感などが重なり、気分の落ち込み、不眠、強い不安、自責感などが続くことがあります。

また、不眠、食欲低下、疲労感、動悸、息苦しさ、頭痛、胃腸症状といった身体の不調や、「産後うつ」をはじめとする心の不調が現れることも珍しくありません。

ブレキサノロン/ズラノロンが持つメリットの一つは、限定した期間の服用で効果が得られることです。このような薬剤が日本でも産後の心の不調を治療する選択肢として使用できるようになればよいと考えていましたが、2025年12月にズラノロンが「うつ病・うつ状態」に効能・効果がある薬として承認され、2026年3月に薬価収載、保険診療で使用できる薬となりました。日本での製品名は「ザズベイカプセル30mg」です。

日本での承認は「産後うつ」に限定されたものではなく、産後うつの患者さんについては、医師が「うつ病・うつ状態」と診断し、ズラノロンによる治療が適切であると判断した場合に、承認された効能・効果の範囲内で使用することができます。

新薬「ズラノロン(ザズベイ)」とは?これまでの抗うつ薬と何が違う?

ズラノロン(ザズベイ)は、これまでの抗うつ薬とは異なるアプローチで脳に働きかける、GABA-A受容体に作用する新しいタイプの抗うつ薬です。

従来の抗うつ薬の多くは、セロトニンやノルアドレナリンなどの神経伝達物質に関わる薬です。一方、ズラノロンは、脳の神経活動のバランスに関係するGABA系に作用すると考えられています。

通常、成人にはズラノロンとして30mgを1日1回、14日間、夕食後に服用します。大きな特徴は、長期間飲み続ける薬ではなく、14日間という限られた治療期間で、急性期の抑うつ症状の改善を目指す薬である点です。

従来薬とズラノロンの比較

項目 従来の抗うつ薬(SSRI等) 新薬ズラノロン(ザズベイ)
主な作用 脳内のセロトニンなどの働きを調整する 脳の神経活動を鎮めるGABAの働きを強める
効果発現の目安 一般に2週間~1か月程度 早ければ服用開始後3日頃から効果発現
一般的な服用期間 数か月以上継続することが多い  1回の治療期間は14日間

※薬の効果や効果が現れるまでの期間には個人差があり、すべての方に同じような改善がみられるわけではありません。

産後うつとの関係について

1.米国での臨床試験

米国で産後うつ病を対象とした臨床試験が行われ、出産後6か月以内の産後うつ病の女性を対象に、ズラノロンを1日1回、14日間服用した場合の効果と安全性が検討されました。

その結果、ズラノロンを服用したグループでは、偽薬を服用したグループと比べて、うつ症状の評価スコアが有意に改善したことが報告されています。服用開始後3日目から症状改善が観察され、45日目まで効果が確認されました。短期間の服用で比較的早期から症状改善が示されたことは、産後うつ病に対する新しい治療の可能性として注目されました。

2.服用する上での注意点と副作用

ズラノロンは、抑うつ症状が認められる患者さんの急性期治療に用いられる薬です。産後の抑うつ症状に対して、患者様の状態によっては治療選択肢の一つとなる可能性があります。ただし、授乳、育児環境、安全性、専門医療機関との連携などを踏まえ、医師が慎重に判断することが大切です。

主な副作用として、眠気、めまい、ふらつきなどが報告されています。そのため、服用中は自動車の運転や危険を伴う機械の操作を避ける必要があります。産後のお母さんが服用する場合は、夜間の授乳、赤ちゃんの抱っこ、階段の昇り降りなど、日常生活の安全面への配慮も必要となります。また、ズラノロンは、ヒトの母乳中へ移行することから、適用については、治療によるメリット、母乳栄養のメリット、お母さんの心身の状態、赤ちゃんの状況などを含め、医師が総合的に判断します。

妊娠中、または妊娠している可能性がある方には使用できません。飲酒や、一部の睡眠薬、抗不安薬、抗うつ薬、抗真菌薬、抗菌薬などとの併用には注意が必要な場合があります。

まとめ

抑うつ症状の急性期治療に用いられる薬として、メリットも大きい薬ですが、治療を行う場合には、症状、生活背景、副作用、安全性を確認しながら、医師の管理のもとで使用することが大切です。

産後うつは、「母親としての努力が足りない」「甘えだ」といった精神論で解決できるものではありません。急激なホルモンバランスの変化、睡眠不足、不慣れな育児ストレス、家庭環境の変化などが重なって起こる、医学的な支援が必要な状態です。

症状が強く出ている場合は、一人で抱え込まず、迷わずかかりつけの産婦人科、心療内科などの医療機関にご相談してください。当院では、総合診療科専門医として、お母様の心と体に寄り添った治療を一緒に考えてまいります。必要に応じ、産婦人科、心療内科などの専門医療機関とも連携いたします。

 


両国横綱クリニック|総合診療科専門医による診療

何科に行けばよいか分からない症状や、なんとなく不調が続く時も、お気軽にお越しください。疲れ・皮膚症状・体調不良など、複数の症状をまとめてご相談いただけます。

仕事帰りや休日にも受診しやすい環境を整えています。

院長 加納永将

総合診療科専門医(日本専門医機構認定)

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