総合診療専門医ブログ
医師を志し、順天堂大学やスタンフォード大学で学び、多くの病院、クリニックで経験を積ませて貰いました。ここまで何人の患者さんと向き合って来たかと思い返すとおそらく1万人を超える患者さんを診て来たのだと思います。
今日は最初に強く印象に残っている患者さんの事を書きます。
場所はウガンダです。アフリカの国です。最貧国の一つで政情は不安定で治安も悪い国です。エボラウイルスの事を覚えておられますか。治療不可能なウイルスとして多くの人の命を奪った病気です。その親戚のようなウイルスが引き起こす病気にマークブルグ病というものがあります。
私は順天堂大学医学部の学生の頃、国境なき医師団への参加を志していた事があります。熱医学研究会に参加しその部長として、アジア、アフリカ各地を訪問しました。
ウガンダはその際に訪問した国の一つです。マラリア治療の研究で訪問し、ウガンダの首都カンパラからほど近い病院に滞在しました。出発の際、母が心配して引き留めた事を思い出します。当時24歳の私は医療を通じて困っている人を助けたいという想いが強かったので怖さは全くなく、未知の場所を訪れる高揚感に包まれていました。
到着し、病院を訪問したその日でしたね。マークブルグ病の疑いが濃い患者が運び込まれて来たのは。流石に驚き、緊張しました。
マークブルグ病はエボラ出血熱と同じフィロウイルス科のウイルスによって引き起こされます。症状や感染経路も似ています。残念ながら治療法やワクチンは存在しません。致死率は80%以上とも言われています。現在までに確認されている限り、発生はサハラ砂漠以南のアフリカでのみ発生している恐ろしい病気です。直近では赤道ギニアで40例の報告があり、内、35名は死亡しています。
私はまだまだ未熟な学生でしたので、治療チームとして直接対応はしませんでしたが、患者さんをベッドサイドで見ながら、何も出来ない無力感と何か自分のやる事は無いのかという自責の念が込み上げて来た記憶があります。
この後はまた別のブログで書きます。ここまで読んで戴き有難うございます。
(両国横綱クリニック院長:総合診療専門医が院長の墨田区両国の内科、皮膚科、アレルギー科)
