メニュー

夏に急増する「食中毒」—正しい知識と日常の工夫で防げる感染症

[2025.06.14]

夏になると気温と湿度の上昇により、食品の傷みやすさが格段に増します。それに伴い、毎年多く発生するのが「食中毒」です。特に細菌が原因となるケースがこの時期には多く見られ、家庭内での調理や保存方法のわずかな油断が、重大な健康被害につながることもあります。

今日の読売新聞(WEB版)にも集団感染の記事が掲載されていました。京都のホテルに宿泊した千葉県船橋市の中学校の修学旅行生の皆さん約100人が腹痛や下痢などの症状を訴え、うち7人の便からウエルシュ菌が検出されたとの内容です。罹患したのは先週で、ホテル内ですき焼きやうどん、シチューなどを食べた後、体調不良が相次ぎ発生したとのことです。発症者は全員、快方に向かっているそうで良かったですね。ウエルシュ菌は肉や魚、野菜などに広く付着します。この細菌は熱に強い芽胞を作るため、高温でも死滅せず、生き残ります。、食品を大釜などで大量に加熱調理した際、他の細菌が死滅してもウエルシュ菌の耐熱性の芽胞は生き残り易く、集団食中毒の原因になります。但し殆どの場合が軽症で済みます。この菌は、動物の腸管、土壌、水中など自然界に広く分布し、ボツリヌスと同じ酸素を嫌う嫌気性菌です。

ウエルシュ菌以外に、夏季に多く見られるのは、カンピロバクター、サルモネラ菌、腸炎ビブリオ、大腸菌(O157など)といった細菌性食中毒です。これらの細菌は、生の鶏肉や魚介類、卵などに付着していることが多く、加熱不足や調理器具の使い回し、不十分な手洗いなどを通じて口に入ってしまいます。特に高温多湿の環境では、菌の増殖スピードが非常に速いため、調理後の食品を室温に長く置いておくことは危険です。

症状

食中毒の症状は原因となる菌によってやや異なりますが、一般的には腹痛、下痢、吐き気、嘔吐、発熱といった急性の胃腸症状が中心になります。例えばカンピロバクターでは、下痢や発熱に加えて筋肉痛や倦怠感が強く出ることがあり、サルモネラでは高熱を伴うこともあります。腸管出血性大腸菌(O157など)では、水のような下痢に加えて血便がみられることがあり、重症化すると溶血性尿毒症症候群(HUS)を引き起こす危険もあります。

多くの患者は数日で回復しますが、乳幼児や高齢者、基礎疾患のある方では重症化するリスクが高く、場合によっては入院が必要となるケースもあります。また、症状が重くなくても、感染者が家庭内で食品を扱うことで他の人にうつしてしまう「二次感染」も注意が必要です。

当クリニックの治療について

食中毒の治療の基本は、原因を特定したうえでの対症療法となります。脱水を防ぐために水分と電解質を十分に補給することが最も重要であり、市販の経口補水液やスポーツドリンクなどが有効です。下痢や嘔吐によって体から失われる水分やミネラルを適切に補うことで、回復を早めることができます。

一方で、自己判断で下痢止めの薬を使用することは避けてください。多くの食中毒では、体が菌や毒素を排出しようとしている状態であり、それを抑えてしまうと症状が悪化することがあります抗菌薬についても、すべての食中毒に有効というわけではなく、むしろ不要な場合も多いため、医師の判断が必要です。

また、重症化が疑われる場合や高齢者・子どもが感染した場合には、早めに医療機関を受診することが重要です。特に血便や激しい腹痛、高熱がある場合、また水分が摂取できない場合には、ためらわず受診してください。当院では症状に合わせた適切な処方等を提案いたします。

食中毒は、日々の調理や保存のちょっとした工夫で防げる病気です。正しい知識を持ち、食材の取り扱いに十分な注意を払うことで、家族みんなの健康を守ることができます。

ここまで読んで戴き有難うございます。

(両国横綱クリニック院長:総合診療専門医が院長の墨田区両国の内科、皮膚科、アレルギー科)

HOME

▲ ページのトップに戻る

Close

HOME