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マスクの効用と正しい使い方-感染症から身を守る科学的根拠

[2025.06.19]

かなり日中の気温が上がって来ましたが、マスクを着用されている方もちらほらとお見掛けします。マスクにはどのような効果があるのか、医学的な統計データを踏まえつつ、まとめてみました。

1. はじめに

マスクの着用は、私たちの生活にすっかり定着しました。特に新型コロナウイルスの流行以降、外出時のマスクは「新しい日常」の一部となっていますが、その効果を科学的に理解している方は意外と少ないかもしれません。この記事では、新型コロナウイルス、インフルエンザ、風邪、そして花粉症など、私たちの身近にある病気に対するマスクの具体的な予防効果を、国際的な研究結果や専門機関の報告をもとに紹介します。また、マスク着用のメリットとデメリット、そして正しい着用方法についてもわかりやすく解説します。

2. 科学的に証明されたマスクの感染予防効果

① 新型コロナウイルス(COVID-19)

アメリカ疾病予防管理センター(CDC)とハーバード大学の研究では、マスク着用によりCOVID-19の感染リスクが約50~70%低下することが報告されています(Brooks JT et al., MMWR, 2020)。また、ノースカロライナ大学の研究では、特にN95マスクが高い予防効果を持ち、布マスクより2〜3倍の遮断効果を示すことが示されました。

② インフルエンザ

日本の国立感染症研究所の調査によると、家庭内でのマスク着用によりインフルエンザの感染リスクが約35%低減されました(Uchida M et al., Journal of Infectious Diseases, 2019)。さらに、WHOのメタアナリシス(Chu DK et al., The Lancet, 2020)でも、マスク着用は一般市民の感染リスクを30%以上減少させるとされています。

③ 風邪(普通感冒)

香港大学の研究(Cowling BJ et al., 2010)では、家庭内でマスクと手洗いを併用することで風邪を含む呼吸器感染症の発症率が最大75%低下したと報告されており、この研究は症状が出る前からの予防的マスク着用が特に有効であることを強調しています。

④ 花粉症・アレルギー対策

日本耳鼻咽喉科学会の調査(2003年)によると、スギ花粉症患者の約80%がマスク着用で症状の軽減を実感しており、日本アレルギー学会のガイドライン(2021年版)でも、マスクは花粉対策の「第一選択肢」として推奨されています。

3. マスクのデメリットと注意点

マスクには多くの利点がある一方で、使用にあたって注意すべき点もあります。まず、マスクを着けていることで安心してしまい、手洗いや換気などの他の感染対策をおろそかにしてしまうことがあり、マスクはあくまで対策の一つにすぎないという理解が重要です。また、高性能マスクは呼吸がしづらいと感じることがあり、特に持病のある方や高齢者、小児は注意が必要です。長時間の着用により、蒸れや摩擦で肌荒れ(マスク荒れ)が起きることもあり、肌の敏感な方は素材や着用時間に配慮が求められます。さらに、マスクを繰り返し使ったり、鼻を出して着けたり、あごにずらして着けるなどの不適切な使用は、感染リスクをむしろ高める可能性があるため、衛生的な管理が不可欠です。

4. 正しいマスクの着用方法

感染症対策としてマスクの効果を発揮するには、「着け方」と「扱い方」が極めて重要です。まず、鼻と口の両方を完全に覆うことが基本で、鼻を出した状態やあごにずらす着け方では効果はほとんどありません。マスクの上部を鼻筋にフィットさせ、顔との隙間をなくすことが大切で、フィット感の高いマスク(不織布・立体型など)を選ぶと効果的です。使い捨てマスクは原則として1日1枚、湿ったり汚れた場合はすぐに交換し、繰り返しの使用は避けるべきです。マスクの着脱時には必ず手を清潔にし、表面に触れないように耳紐を持って扱うことで、マスクの内外に付着する病原体への接触を最小限に抑えることができます。

5. 生活者としてのマスクとの向き合い方

マスクは、医学的にも社会的にも感染症対策として非常に有効な手段であることが、多くの研究によって証明されています。コロナやインフルエンザ、風邪、さらには花粉症まで、私たちの身近な健康リスクを軽減してくれる存在です。しかし、正しい使い方を守らなければ、その効果は大きく損なわれてしまいます。また、「マスクだけで安心」と思い込まず、手洗いや換気、体調管理など他の基本的な対策と組み合わせることで、感染予防はより強固なものになります。私自身、内科医として多くの患者さんと接する中で、マスクが「自分を守る道具」であると同時に「他者を思いやる行動」でもあることを日々実感しています。感染症との共存が続く社会において、マスクとの賢いつきあい方を、今一度考えてみてはいかがでしょうか。

ここまで読んで戴き有難うございます。

(両国横綱クリニック院長:総合診療専門医が院長の墨田区両国の内科、皮膚科、アレルギー科)

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