熱順化とは?夏本番を迎える前に体を慣らす大切なステップ
6月も下旬に入り、これから気温が一気に上がる季節になります。例年、真夏に入る頃に熱中症で救急搬送される方が増えるのもこの時期の特徴です。今回は、そのリスクを減らすための重要な対策「熱順化(ねつじゅんか)」についてご紹介します。
熱順化とは?
熱順化とは、体が高温環境に適応していく過程のことです。「順化」は常用外の漢字を使って「馴化」とも書きます。熱に馴(な)れる、ということですね。気温が上がると身体を冷やす為に汗をかきます。これは身体が自然の備えている機能です。問題はこの機能が十分働かないケースです。加齢による影響も大きいのですが、気温が急に上がると、汗をかく機能や体温調節の能力が十分に働かない場合があります。これが熱中症のリスクが高めてしまうのです。夏になり、気温が上がって来る季節に身体を熱に馴染ませること、この熱順化が進むことで、汗をかきやすくなり、体温を効率よく下げられるようになり、暑さに強い体になります。
この熱順化プロセスには一般的に5日から2週間ほどかかるとされています。ですから、真夏の本格的な暑さが始まる前から、計画的に体を慣らしておくことが重要です。
熱順化のための大事なステップ
1.無理のない範囲での屋外活動(1日20〜30分)
最初の1週間は、気温が比較的低い朝や夕方に、軽いウォーキングや自転車などの有酸素運動を20〜30分行いましょう。マスクを着用する場合は、周囲に人がいない状況で外すなど、呼吸しやすい環境を確保してください。
2.室内でも汗をかく工夫を
外に出られない日は、室内で少し動いたり、入浴時に湯船にしっかり浸かることでも汗をかく練習になります。扇風機や冷房を使いすぎず、軽く汗をかく程度に温度を調整することが効果的です。
3.水分・塩分補給を忘れずに
汗をかくことで体内の水分と電解質が失われます。水だけでなく、適度な塩分を含む飲料(スポーツドリンクや経口補水液など)でこまめに補給しましょう。喉が渇く前に飲むのがポイントです。
4.徐々に活動量を上げる
最初は軽い運動から始めて、1週間後くらいからは少し強度を上げてみましょう。たとえば、少し早歩きや軽いランニングなど。自分の体調をよく観察しながら、無理のない範囲で行ってください。
5.毎日の健康チェックを習慣に
朝の体温、睡眠の質、食欲、だるさなどを日々チェックする習慣を持つと、体の変化に早く気づけます。少しでも異変を感じたら無理をせず休息を取りましょう。
熱順化は「体を暑さに慣らすトレーニング」です。スポーツ選手だけでなく、誰にとっても必要な準備です。特にご高齢の方、持病のある方、普段あまり外出されない方は、より慎重に段階を踏んで体を整えていくことが大切です。
これからの暑さを健康に乗り切るためにも、ぜひ今日から実践してみてください。
ここまで読んで戴き有難うございます。
(両国横綱クリニック院長:総合診療専門医が院長の墨田区両国の内科、皮膚科、アレルギー科)