ストレス性蕁麻疹(じんましん)について
ストレスが原因で起こる、かゆみを伴う皮膚トラブル
「仕事や人間関係、悩み事で強いストレスが続いたあとに蕁麻疹が出た。急に体がかゆくなり、赤く盛り上がった発疹が出た」
このような症状でお悩みの方は、ストレス性蕁麻疹の可能性があります。蕁麻疹は皮膚科で日常的に診療する身近な病気の一つで、外的かつ物理的な要因ではなく、メンタル面のストレスが引き金となるケースは決して珍しくありません。
ストレス性蕁麻疹の主な症状
- 突然あらわれる赤い盛り上がり(膨疹)
- 強いかゆみを伴う
- 数十分〜数時間で消えるが、繰り返し出現する
- 全身または一部(顔・首・腕・体幹など)に出る
- 夜間や疲れているときに悪化しやすい
多くの場合、跡を残さず消えるのが特徴ですが、症状を繰り返すことで生活の質(QOL)が低下することもあります。
ストレス性蕁麻疹の原因
ストレスが引き金となって起こる蕁麻疹を、一般に「ストレス性蕁麻疹」と呼びます。
正式な病名というよりは、心理的・身体的ストレスや自律神経の乱れが関与して出現する蕁麻疹の総称、という理解が適切です。
ストレス → 自律神経・ホルモン・免疫の乱れ → 肥満細胞が刺激され → ヒスタミン放出 → 蕁麻疹
という流れで発症します。原因がメンタル面のストレスなので、症状が発生する仕組みを頭で理解しておくことで、安心感を生み、予防にもつながりますので、機序を丁寧にご説明します。
(1)ストレスが自律神経を乱す
まず、精神的なストレスが切っ掛けとなります。何をストレスと感じるか、プラス側(→向上心、積極性を生む)、マイナス側(→気分の落ち込み、過剰な興奮等)のどちらに影響を与えるかは、人によって、或いは時期によって違いが有ります。
例えば、仕事が全体として非常に順調に進んでいるにもかかわらず、ちょっとしたミスや不調を気にしてしまい、その事を大きい負担として感じてしまう、、、頭の中で何度も思い出してしまう。この様な状態を経験した方はいませんか。実は優秀で、責任感の強い人程、この様に感じる傾向を持っています。
精神医学の世界では、反芻(rumination)、或いは、ネガティビティ・バイアス(negativity bias)等と呼びます。損をしたことそのものより、『損をしたと感じる不快感』が強く残っている状態、損失回避(loss aversion)が強く出ている状態、と言えるでしょう。
この精神状態の時、交感神経が過剰に優位となる一方で、副交感神経は抑制されます。この自律神経のアンバランスがストレス性蕁麻疹の始まりとなります。
(2)マスト細胞(肥満細胞)が刺激される
皮膚の真皮には マスト細胞(肥満細胞) が存在します。
- アレルギー反応
- 感染防御
に関与する細胞ですが、自律神経の乱れ(ストレス時)にも分泌されるCRH(副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモン)、カテコールアミン(アドレナリンなど)が直接この肥満細胞を刺激します。
(3)ヒスタミンが放出される
刺激を受けたマスト細胞から、ヒスタミンやロイコトリエンなどが放出されます。これらは、血管を拡張させ、血管の透過性亢進する作用を持ちます。その結果、皮膚に、赤み・膨疹(ミミズ腫れ)・かゆみ(=蕁麻疹)が出現します。
つまり、蕁麻疹は、皮膚の中にあるマスト細胞(肥満細胞)からヒスタミンなどの化学物質が放出されることで起こるのです。
ストレスと蕁麻疹の関係
皮膚科の立場から見ると、ストレス性蕁麻疹は単なる「気のせい」ではなく、神経・免疫・皮膚が相互に影響し合って起こる病態と考えられています。
その背景(切っ掛け)にストレスが有る訳です。そのため、皮膚症状だけでなく、背景にある体調や生活状況も含めて評価しながら治療を行うことが重要と考えています。
日常生活における予防・対策
(1)まず前提(重要)
「損を気にしない」ことを目標にすることは難しいし、むしろ損失回避があるから今の成功がある、と言えます。従い、目標は「損失回避が暴走しないように上手くマネージする」ということになります。
(2)即効性が高い気持ちの切り替え技(すぐに使えて効果があります)
①気になる事象、損失等を「比率」で考えて見ましょう
損が気になった瞬間に、こう考えましょう。例えば、今日の損失が5,000円だとすると、年収800万円の方ならば、年収比 0.06%にしかなりません。実は、脳は「絶対値」に影響を受けやすい、という特徴があります。比率で考えることは、全体感、バランス感を生み、理性のスイッチを入れることになります。
② 「回収済み項目」を意図的に探しましょう
損ばかり見ている時、脳は「回収」を無視しています。
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- 得た時間
- 学習
- 安心
- 関係性
- ストレス回避
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「回収」を3つ以上を言語化して考えてみて下さい。少しずつ心のバランスが取れてくることを実感できると思います。
③ 判断と感情を分離する一言
頭の中で、「この判断は合理的だった。今残っているのは感情だ」と自分に語りかけます。その事で、判断は過去、感情は現在であること、つまり判断と感情が別であることへの気付きが得られます。
(3)神経系に直接働き掛ける
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- 体を動かしてから考える
10〜20分歩く、そして体温を少し上げると、交感神経→副交感神経への切り替え、反芻という思考のループを切る事が出来ます。これは生理学的にも確実なアプローチとなります。
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- 睡眠不足は最悪の敵
睡眠不足で、損失回避が約1.5倍になり、ネガティブ反応が増幅されると言われています。質の良い睡眠、充分な睡眠に心掛けましょう。
当院での治療について
ストレス性蕁麻疹を発症する方は、強い責任感、高い能力や実行力と言った強みを持っているケースが多く、寧ろ好ましいと言えるのですが、それ故に、気付かない内に、過度のストレスを貯めてしまっている状態と言えます。
先ずは、日常の予防や対策が大事ですが、発症した方に対して、両国横綱クリニックでは、症状を速やかに抑えることと、再発を防ぐことの両方を重視した治療を行っています。
主な治療内容
- 抗ヒスタミン薬の内服(眠くなりにくい薬を選択)
- 症状の程度に応じた薬剤調整
- 他の病気(感染症・内科疾患・甲状腺疾患など)が隠れていないかの確認
- 必要に応じて生活習慣やストレス要因へのアドバイス
蕁麻疹は自己判断で薬を中断すると再発しやすいため、症状が落ち着いてからもしばらく治療を継続することが大切です。
繰り返す蕁麻疹は、早めの受診を
「いつものことだから」と放置していると、蕁麻疹が慢性化(6週間以上続く状態)することもあります。蕁麻疹は、適切な治療によってコントロール可能な病気です。かゆみや不安を我慢せず、どうぞお気軽にご相談ください。「心の問題だから我慢する」のではなく、体からのサインとして蕁麻疹が出ていると考え、早めにご相談ください。
ここまで読んで戴き有難うございます。
(両国横綱クリニック院長:総合診療専門医が院長の墨田区両国の内科、皮膚科、アレルギー科)
